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書評 - 石井彰『木材・石炭・シェールガス - 文明史が語るエネルギーの未来』(PHP研究所 PHP新書、2014年)
石井彰『木材・石炭・シェールガス - 文明史が語るエネルギーの未来』 Facebook でどなたかが記事にしていた本書、気になっていたので丸善で購入、昨日読了しました。
 以下、著者の論旨をわきたの理解と言葉でサマライズしました。

・・・・・

 地球という閉じた系のなかで考えると、再生可能エネルギーとは、単位期間内に地球上に供給される(=降り注ぐ)太陽光エネルギーを源泉として、その期間内に消費するエネルギーである。従って、その期間内に外部から供給される太陽光の量により期間内消費量の上限が制約を受ける「フロー」のエネルギー消費であると言える。
 いっぽうで、化石燃料エネルギーは、地球上に植物が誕生してから現在までに供給された(=降り注いだ)太陽光エネルギーを植物が光合成によりCO2還元物(=炭素)として地下に蓄積したエネルギーであり、それをいま人類が取り出して消費しているものである。従ってこれは過去の蓄積をその蓄積の範囲内で消費しているのであり、単位消費期間内に外部から供給される太陽光の量による制約を受けない「ストック」のエネルギー消費であると言える。
 さらに、原子力エネルギーも化石燃料エネルギーと同様に「ストック」のエネルギー消費である。これは、物質の誕生以来の量子エネルギーが放射性物質として地球に蓄積されたエネルギーであり、それをいま人類が取り出して消費している。従って原子力エネルギーもまた「フロー」制約を受けない。
 産業革命は、人類がそれまで100%依存してきた薪や炭など「フロー」のエネルギーに代わり、石炭という「ストック」のエネルギー利用が実用化されたことで、もたらされた。
 「フロー」エネルギーのみに依存していた時代の最後のほうでは、人類のエネルギー消費がフロー制約の上限に達しており、薪炭を切り出すための不可逆的な森林破壊と砂漠化が、日本も含め世界中で起きていた。そんな事態に終止符を打ち、さらには産業革命へ向けた更なるエネルギー供給を可能としたのが、人類にとっての最初の「ストック」エネルギーである石炭利用であったのだ。
 CO2排出量規制と、3・11以降の国内全原発の停止により、再生可能エネルギーが脚光を浴びている。しかし、日本では既に水力エネルギー消費はフロー上限に達しており、期待の太陽光発電も総合的なエネルギー供給効率から言えば、かつての森林生育⇒薪炭利用の十数倍程度でしかない。現在の日本のエネルギー消費は薪炭利用時代末期の40倍に達しており、従って、今後縮小が期待される火力発電と3・11以来停止している原子力発電とを再生可能エネルギーで置き換える、など絶対に不可能である。
 「多少の不便は我慢して日々の暮らしの節制・省エネに心掛ければ、再生可能エネルギーによる社会構築は可能」とする声も聞かれるが、「冷暖房を少し我慢する」程度の卑近な省エネ努力で何となるような程度のものではない。現在私たちが市場で手にするあらゆる商品(第1次産品のほとんどと第2次産品のすべて、およびそれらの供給を受けて再生産される第3次産品のすべて)は、膨大なエネルギーを消費して生産されている。それらの供給/消費水準を明治時代初期程度にまでリデュースしたうえで、当時薪炭利用目的で伐採されていた森林と同じくらいの面積を持つメガソーラーを敷設すれば、やっとエネルギーフローがバランスする。そんなことを受け容れる覚悟が、私たちにあるか?

・・・・・

 著者は、再生可能エネルギー開発に過度の期待を抱いて「エネルギー革命」などと呼ぶ風潮に対して、「『ストック』エネルギーから再び『フロー』エネルギーに回帰するなどというのは、その末期の環境破壊の惨状について無知だからこそ言える『エネルギー反革命』論である」と断じます。そして、それぞれに個別の大きな問題点・課題を抱える、自然再生エネルギー/化石燃料エネルギー/原子力エネルギーをうまく組み合わせた「エネルギーベストミックス」が必要であると説くのです。
 著者自身が「独立行政法人『JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)』」の研究員を長く務めていたこともあり、天然ガスを中心とした化石燃料エネルギーに少々甘い論調となっている点は見受けられるものの、上述の論旨にわきたは共感を覚えました。
 いずれにしても、CO2問題や日本経済への影響には全く触れないヒステリックなだけの反原発主張や、再生可能エネルギーが全てを解決するかのようなユートピアな幻想からは、そろそろ抜け出さなくてはならないと思うのです。
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| 書評 | 04:08 PM | comments (0) | trackback (0) |










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